共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得 単行本 – 2022/6/22 森 朝奈 (著)

ビジネス
■タイトル・著者:共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得 単行本2022/6/22 森 朝奈 (著)
■感想

第1章:はじめに 〜本書との出会いと記事の目的〜

「IT企業から魚屋さんへ」という一見すると真逆のキャリア転換。そんな大胆な決断を下した著者・森朝奈さんの生き方に、思わず惹き込まれた方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。

現代は副業や転職が当たり前になりつつありますが、「家業を継ぐ」「リアルな商売をデジタルで再構築する」というテーマを軸に、森さんは単なる「地方の魚屋」に留まらない活動を展開しています。本書『共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得』は、そんな彼女のビジネス哲学を体系立てて紹介した一冊です。

この記事では、本書を読んで私が感じたこと、心に残ったメッセージ、そして「共感ベース思考」というキーワードがどのように現代のビジネスや働き方に影響を与えるのかを、読者の皆さんと共有したいと思います。

これから本書の魅力を章ごとに紐解いていきますので、「地方での事業承継」「デジタル時代の商い」「共感によるブランド作り」に関心のある方には、ぜひ最後まで読んでいただければ嬉しいです。

第2章:著者紹介 〜森 朝奈さんとは?〜

森朝奈(もり・あさな)さんは、名古屋市の老舗鮮魚店「寿商店」の二代目として知られる女性実業家です。彼女の経歴は極めてユニークで、まさに本書のテーマである“逆転のキャリア”を体現しています。

■ 華々しいキャリアの出発点

森さんは早稲田大学を卒業後、楽天株式会社に入社。エリート街道ともいえるその経歴の中で、彼女は大手IT企業のビジネススピードや論理的思考を学びました。しかし、入社からわずか2年で退職を決意します。その理由は、「実家の鮮魚店を継ぐ」という決断でした。

この転機は、外から見れば“もったいない”と思われるかもしれませんが、彼女にとっては「家業の可能性に気づいたこと」がすべての出発点だったのです。

■ 家業に入って見えた現実

24歳で家業に入った森さんは、現場の泥臭さや業務の非効率さに驚きながらも、IT企業で培った知識をもとに、経営の改善に着手します。SNSでの情報発信、裏方の業務の見える化、そして商品価値の再構築などを行い、古くからの魚屋を“共感されるブランド”へと変貌させていきました。

■ 魚屋の森さんとしての顔

現在は、YouTubeチャンネル「魚屋の森さん」を運営し、登録者は27万人超(2025年6月時点)。魚をさばく動画や、おせちの製造風景などを通じて、「魚屋の日常」を伝え続けています。InstagramやX(旧Twitter)でも多くのファンを持ち、魚の知識と人柄の両面で支持を集めています。


第3章:「共感ベース思考」とは何か?

本書のキーワードである「共感ベース思考」とは、単に“良い商品”を売るのではなく、共感できるストーリーや姿勢を軸に商いをする、という考え方です。

■ ワクワクではなく、共感から始める

一般的にビジネスのモチベーションとしては「ワクワク感」や「革新性」が語られがちですが、森さんは「まずは共感から始める」と説きます。つまり、「お客様が困っていること」「現場のリアルな課題」に目を向け、それにどう寄り添えるかを考えるのです。

この思考は、派手さはないものの、お客様との信頼関係を長期的に築くのに極めて有効です。

■ 見えない努力を「見える化」する

たとえば、森さんは年末のおせち作りの様子を動画やSNSで公開しています。深夜まで作業を続ける様子や、丁寧に素材を扱う職人たちの姿が映されることで、消費者は「こんな思いで届けられているんだ」と感じ、自然と応援したくなるのです。

このように「見えない努力」をあえて“見せる”ことで、共感と信頼が生まれる。これこそが「共感ベース思考」の神髄です。


第4章:本書の主要メッセージと実践ポイント

本書には、多くの気づきや実践的な教訓が詰まっています。以下では特に印象的だったポイントを3つ紹介します。

①「0→1をつくるのは自分」

森さんは、「与えられた役割をこなすのではなく、自分で価値を創造することが大切」と強調します。家業の中にあった“穴”を発見し、それを自分の手で埋めていく。これはすべてのビジネスパーソンに共通する課題であり、ヒントでもあります。

②「顧客との関係性」を最重視する

SNSのフォロワー数を伸ばすことが目的ではなく、「共感して行動してくれるファンをつくること」が大切だと森さんは言います。たとえば、DMに対して丁寧に返信する、クレームにも誠実に対応する、そうした積み重ねが“信頼される商売”を支えているのです。

③「小さな成功を積み重ねる」

「一気に改革する」のではなく、「今日できる一歩」を継続する。森さんのやり方は、派手ではありませんが、確実で応用可能な方法論です。これは、企業経営だけでなく、副業や個人事業にも通じるマインドセットでしょう。


第5章:誰にこの本をおすすめしたいか?

この本は、単に“魚屋さんの話”にとどまりません。以下のような方には特におすすめです:

  • 地方で家業を継ぐことを考えている人

  • デジタル時代の「リアルな商売」に興味がある人

  • SNSを活用した共感型マーケティングを学びたい人

  • 自分の仕事に「意味」や「想い」を見出したいと考えている人

特に、若手の経営者や個人事業主にとっては、“地に足のついた”ビジネスの作り方を学べる良書です。


第6章:まとめ 〜共感から始まる商いのかたち〜

本書『共感ベース思考』は、魚屋という日常的な商売を舞台にしながらも、現代のビジネスや働き方の核心を突いた一冊です。

「お客様に選ばれる理由は、共感にある」——このメッセージは、どんな業種でも通じる普遍的な真理でしょう。

森朝奈さんの実践に学びながら、私たちも「自分ならではの共感」を起点に、仕事や商売を再構築することができる。そんな可能性を感じさせてくれる内容でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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